生命のあるもの
生命のあるものは、きびしさにあるときたえられてより力がついてゆくものです。
ところで話は変わるようだが、百貨店の呉服売り場、とくに帯の売り場に行くと、三重丸のついた新装帯というのが口につくでしょう。
◎は、子供の頃、よくできましたといって先生のつけてくれた三重丸だ。
この会社は、お客様から、◎つけてもらえるような商品を作ろうという心意気から三重丸を社章にしたものです。
あるとき、この会社の副社長が次のようなエピソードを語ってくれた。
「今から十年ほど前のことです。
お恥ずかしい話ですが、私の不注意から.士供にやけどをさせたことがあります。
ちょうど、十二月三十一日で、私は紅白歌合戦を見ておりました。
家内は台所で、正月用のおせち料理に熱中していたようです。
そのとき、四つになる子供が、気をきかせて一人でお風呂に入ろうと思ったのでしょう。
ところが、うっかりしていたものですから風呂は煮えたぎっていたのです。
子供はそれに気がつかず、片足を突っ込んだものですからたまりません。
"キャアー"という声に飛んで行ってひきあげたのですがもう遅い。
今は完治しましたが、そのときはすねのあたりが一皮むけかかっているのです。
ところが強いものですね、足の裏はやけどしていないんですよ。
歩き始めて何年といった方がよいぐらいの子供の足でも、歩いて鍛えた足の裏はそれだけ強靱にできているんですねLたしかに、生まれたばかりの子供の足の裏は、つきたての餅のように柔らかい。
生まれたばかりのときは、あの可愛いほっぺたの皮の厚みも足の裏の厚みも同じだそうです。
それが歩いて歩いて刺激を与えると、お互いの足の裏のように厚くなる。
松の皮も、足の皮も、すべて生命のあるものは困難に出あって、乗り越えてゆくと厚くなる。
そして、そこに歴史がつくられるのだ。
青年の魅力は若さだ。
そして若さとは情熱だ。
情熱のほとばしるところに勇気が湧く。
勇気を持って困難を克服するところにお互いの歴史がつくられる」
生命ある限り困難に正面からぶつかってきたいものです。
もうひと言、マイナスの格言も紹介しておこう。
「鉄の錆は鉄から出て鉄を殺す 人の悪は人から出て人を殺す」